狩野直喜著『支那哲學史』 はしがき

はしがき

この書物は、著者が京都大學の哲學科普通講義として、數囘くりかえして行ったものを、著者の草稿の存する部分は、それをもととし、草稿のない部分は、學生のノートによって整理編集したものである。著者の生前、その校閲を經たものではない。

整理に當ったのは、著者早年の學生であり、この講義の全部をきいた佐藤廣治である。草稿は、講義がくりかえされる間に、だんだん修改されているが、なお不完全であり、飛び飛びに約半分ぐらいしかない。あとは佐藤みずからのノート、また小島祐馬などの他の學生のノートによった。それに吉川幸次郞が、少許の修改を加えた。吉川は著者晚年の學生であり、この講義の全部をきいていないが、草稿の存する部分でも、明かな誤りと思われるものは、意を以て改めた。

校字と索引とは、著者の孫である狩野直禎が當った。

羽田亨氏の主宰する東方文化援護會は、草稿の整理に對して援助を與えられた。また鈴木寅雄氏は題簽を揮毫された。出版をひきうけた岩波書店に對すると共に、感謝の意を表する。